10月からインボイス制度が開始されましたが、ブログへのアクセス等を見ていると取引先がインボイスに対応していない場合にどうしたら良いのか困っている方が多いように感じます。
今回は、「これまで免税事業者だった、又は開業したばかりの個人事業主でインボイスの登録事業者となった方向け」という切り口で、
- 取引先がインボイス未対応でも影響が無い場合、影響がある場合。
- 影響がある場合はどのくらい影響があるのか。
についてのみポイントを絞ってまとめてみました。
取引先がインボイスを発行できなくても影響が無い場合
取引先がインボイス未登録でインボイスを発行出来なくても影響が受けないのは以下のいずれかの場合です。
①消費税の申告で2割特例を選択した場合
②消費税の申告で簡易課税制度を選択した場合
③1回の取引金額が10,000円未満の場合
(自身がインボイス少額特例対象事業者に該当)
※インボイス少額特例の詳しい内容は前回の記事を参照下さい。
他にも3万円未満の公共交通機関の利用はインボイス不要などもありますが、今回は割愛しています。
①2割特例はこれまで免税事業者だった又は開業したばかりの個人事業主でインボイスの登録事業者となった多くの方が採用すると思います。
この2割特例は売上の消費税をベースに計算する方法のため、支払に関しては度外視されます。
つまり、インボイスを受け取っていなくても売上ベースで計算するため影響を受けません。
②簡易課税制度も同様の理由により影響を受けません。
③1回の取引金額が10,000円未満の場合は、自分がインボイス少額特例の対象であれば影響を受けない事となります。
少額特例の記事でも書きましたが、個人事業主の多くは該当すると思いますし、これまで免税事業者だった又は開業したばかりという前提条件であれば基本的には対象となるはずです。
※このうち①と③は期間限定の制度です。
取引先がインボイスを発行できないと影響を受ける場合
上記の以外の場合は、ひとまず3年間は支払金額の2%分を消費税の納税額として自己負担する形となります。(軽減税率の場合は1.6%)
つまり本則課税(原則的な計算方法)を選択する事となりますが、この場合、3年間は経過措置があり相手から受け取った領収書等がインボイスで無くとも80%は控除する事が可能です。
例:税抜30,000円、税込33,000円の支払いの場合
インボイスを受け取った場合:税込33,000円の支払い→3,000円控除可能
インボイスを受け取っていない場合:税込33,000円の支払い→3,000円✕80%=2,400円控除可能
※3,000円と2,400円の差額600円=30,000円(税抜支払金額)✕2%→600円
本則課税の場合、開業時の還付目的であえてそちらを選択するケースもあるので一概には言えませんが、事務負担や長期的な納税額の有利不利など総合的に考えて①2割特例、②簡易課税制度を選択する方は多いと思います。
なお、③の少額特例は計算方法に関係無く適用となりますので、①、②に該当していなくても③に該当する場合はその取引のみインボイス未発行の影響を受けません。
まとめ
今回は「取引先がインボイス未対応時の影響の有無」に焦点を絞っていますので、計算方法による有利・不利などはまた別の話となります。
ポイントは、
現段階では、取引先が未対応でも影響を受けるケースはまだ少ない。
影響を受ける場合でも支払金額の2%とまだ多少傷は浅い(最終的には支払金額の10%になる)
という点です。
今のところ大丈夫だから「まぁいいか」という事では無く、慌てずに今後の意思決定のために現状を把握していただければと思います。
なお、影響を受けない=領収書等の保管が不要という訳では無い(所得税とか法人税の方で必要になります)点に関してもご注意下さい。