農業の簡易課税における2種と3種の違いと、間違えやすいポイント

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2026.06.11
農業の簡易課税における2種と3種の違いと、間違えやすいポイント

農業の簡易課税における2種と3種の違いと、間違えやすいポイント

自分で育てたさつまいもを干し芋に加工して売る。

これは農業なのか、製造業なのか。

消費税の簡易課税をめぐって、実際にそこが争われた事例がありました。

「自分で作っているのだから農業だろう」という感覚は自然です。

実際、自家栽培した作物を加工して売っていても、農業に分類される場合はあります。ただし、加工の設備や人の働き方によっては、製造業になることもあります。

この事例をきっかけに、どこで誤解が起きやすいのかを整理します。

農業の簡易課税で2種と3種の違いはどこにあるか

自分で育てた食用の農産物をそのまま売れば第二種。加工して売る場合は、農業に分類されるか、製造業に分類されるかによって区分が変わります。

簡易課税は、事業区分ごとに「みなし仕入率」という割合を決めています。

実際の仕入れや経費に係る消費税額を集計する代わりに、売上に係る消費税額にこの率を掛けて、控除額を計算する仕組みです。

つまり、同じ売上税額で比べると、この率が低い方が引ける分は少なくなり、納税額は増えます。

自分で育てた食用の芋をそのまま売れば第二種で80%。加工販売の事業が製造業に該当すれば、第三種で70%です。

ただし、加工したら必ず第三種になる、というわけではありません。

今回の事例では、自家栽培のさつまいもを干し芋に加工して売る事業について、農業として第二種になるのか、製造業として第三種になるのかが争われました。

結果は製造業として第三種。

同じ自分の芋でも、加工の設備や従業者の実態によって、区分が変わると判断されました。

そして厄介なのは、その線引きが、私たちのイメージとずれることがある。という点でしょうか。

なぜ自家栽培でも製造業と判定されたのか

判断のもとになるのは、おおむね「日本標準産業分類」の大分類です。

主に自家栽培した原材料を使って製造・加工する場合は、農業の活動とされています。

ただし例外があり、次の二つがそろうと製造業に分類されます。

  1. 一つは、同一構内に工場や作業所とみられるものがあること。
  2. もう一つは、その製造活動に専従する常用従業者がいることです。

今回取り上げている令和7年9月8日の国税不服審判所の裁決では、自宅敷地内の建物に加工用の機械が置かれ、作業所として機能していました。

そこで芋を洗う、蒸す、皮をむく、スライスするといった作業を行っていました。

そして、加工の時期に約3か月間雇った従業員が、その加工の作業に専従していました。

この実態から、農業ではなく製造業と判断されました。

ここで気になるのは、加工が一年中行われていたわけではないという点です。

建物は加工時期以外には農業のために使われ、加工に専従する従業員も、その時期に合わせて雇われていました。

それでも、作業所と専従の常用従業者があると認められています。

時期限定の加工だから農業のまま。臨時で雇っているから常用従業者ではない。そういう感覚だけでは判断できないところに、難しさがあります。

店先でちょっと干した程度は別の考え方

一方、小売店が仕入れた食料品に軽微な加工をして売る場合には、第二種のままとして扱えることがあります。

国税庁の説明では、切る、刻む、乾燥させるなどの加工が、この取扱いの例として挙げられています。

正直、乾かすのは結構性質が変わる気もするのですが、こうした加工でも、一定の条件を満たせば第二種として扱えるとされています。

私たちが日常の感覚で考える加工と、制度上の線引きは、必ずしも同じではないということですね。

ただし、この取扱いには条件があります。

他から仕入れた食料品について、加工前の商品を販売する店舗で一般的に行われる加工であり、加工後の商品も同じ店舗で販売されることなどが必要です。

自家栽培した作物の加工とは、別の話になります。

また、干し芋は単に芋を乾かすだけとは限りません。今回の事例でも、蒸す工程が入っていました。

そのため、同じ干し芋でも、店先で作ったから第二種とは言い切れません。

加工する場所や量だけでなく、どんな原材料を使い、どんな工程で作り、どのように販売しているかを確認する必要があります。

今回の農家の事例を日常の言葉で捉えるなら、「本腰を入れて加工する体制になっているか」というイメージは、確認のきっかけになりそうです。

ただし、それ自体が判定基準ではありません。実際には、作業所や従業者の状況を具体的に見ていくことになります。

みなし仕入率が下がると、単純に損なのか

第二種は80%、第三種は70%。

率だけを見ると、製造業になると不利になるように感じるかもしれません。

同じ売上税額なら、その見方は合っています。

例えば、売上に係る消費税額が10万円であれば、第二種では8万円を控除して差額は2万円。第三種では7万円を控除して差額は3万円になります。

※他の調整を省いた単純な比較です。

ただ、商売の話として考えるなら、加工によって売価そのものが変わる点も見たいところです。

例えば、芋をそのまま税抜100円で売る場合、軽減税率8%なら、売上に係る消費税は8円です。

第二種として80%を掛けると、控除額は6.4円、差額は1.6円になります。

一方、加工した干し芋を税抜200円で売る場合、同じく軽減税率8%なら、売上に係る消費税は16円です。

製造業として第三種に該当する場合、70%を掛けると、控除額は11.2円、差額は4.8円になります。

※仕組みを説明するための例であり、実際の申告計算や端数処理は省いています。

率は下がったのに、控除額そのものは増えています。売価が上がったからです。

ただし、納税額も増えているので、控除額が増えたことだけで得とはいえません。加工には、設備や光熱費、人の手間もかかります。

加工の費用には、消費税がかかるものもあれば、従業員への給与のように消費税がかからないものもあります。

とはいえ、簡易課税では、それらを個別に積み上げて控除額を決めるわけではなく、事業区分ごとの率で計算します。

みなし仕入率の設定理由を、人件費だけで説明することはできません。ただ、加工の費用すべてが、そのまま消費税の控除につながるわけではないという点は、押さえておきたいところです。

私としては、80%か70%かという数字だけで損得を見るより、加工でどれだけ売価を上げられ、そのためにどれだけ費用がかかるかまで見たいと思います。

もちろん、事業区分は有利な方を選べるものではありません。

区分は実態に合わせて正しく判断する。

そのうえで、加工販売という商売の採算は、別に考えるということですね。

いちばん危ないのはイメージで決めること

自分の手で育てて、自分で加工しているのだから農業。

この感覚はとても自然だと思います。

種をまいて、世話をして、加工して売る。

気持ちのうえでは最初から最後まで農業ですよね。

その実感はよく分かりますし、第二種だと思ってしまうのも無理はないと思います。

実際、自家栽培した原材料を主に使う加工が、農業に分類される場合もあります。

ただ、そこで確認を止めてしまうと、加工の体制によっては区分を取り違え、納める税額も変わってしまいます。

逆に、加工しているという理由だけで第三種と決めつけるのも違います。

気持ちは気持ちとして、制度の方は設備や人の働き方などの実態を見て判断する、という点は注意ですね。

加工販売を始めたり、加工用の設備や人員を増やしたりしたら、一度立ち止まって確かめる。

原材料は主に自家栽培なのか。どんな工程で加工するのか。

どこで、誰が、どの期間働いているのか。

農産物と加工品の売上も分けて把握しておくと、区分を確認しやすくなります。

なお、ここまでの第二種・第三種とみなし仕入率の違いは、簡易課税で消費税を計算する場合の話です。

業種をイメージだけで決めない。

自分の事業は農業のままなのか、それとも加工販売の部分は製造業に当たるのか。

実際の仕事の中身をもとに確かめる。それだけで防げる誤解もあると思います。


プロフィール(東盛 学/税理士)

岐阜市の動物好きな税理士。

法人・個人事業主どちらも対応し、規模にかかわらず一人ひとりと向き合うことを大切にしています。

顧問先のハッピーライフを会計・税務から支えます。

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